二十一世紀は心の時代?

- 仏教と心理学 -

 

 ここ数年自殺者の数が三万人を越え、また連日のように痛ましい事件が報道される不穏な世相を反映してか、心理学を学ぶ人が増えていると聞きます。いわき明星大学にも心理学科が新設され、競争率も高いと聞きました。

 そんな折り、今月、9月7日から9日までの日程(8月現在)で日本トランスパーソナル心理学会(事務局東京医科大学病院精神医学教室)の大会が曹洞宗駒沢大学を会場にして開催されます。
 大会プログラムを見ると、僧侶、医者、臨床心理士など多くの方々が参加されていて、少し変わった大会であることがわかります。

 プログラムの内容で目を引いたのは、僧侶はもとより、お医者さんまでが「抜苦与楽」という仏教用語を使っていたことです。「抜苦与楽」とは文字通り、人々を苦しみから救い、安らぎを与えるという仏教の基本的な教えですが、普段そのような意識を持っていない私には、恥ずかしながら新鮮に感じた次第であります。

 しかしよくよく考えてみますと、仏教はじめ宗教は悩める人を救い、医者は体の病める人を助け、カウンセラーは、人を精神的苦悩から解放させることを宗としているわけですから、職種の違いこそあれ、それぞれに、根底には「抜苦与楽」の志があってもおかしくないということを実感し、妙に納得させられた次第であります。

 そもそもトランスパーソナル心理学は、アメリカにおいて1960年代以降、物質文明に限界を感じた人々が、東洋の仏教など、あらゆる宗教、医学、文化に精神的な救いを求めて、苦悩を、実際に体験を通して克服しながら、発達させてきた心理学であり、その点において、日本の現在のような社会状況に通じるものがあり、不安を抱いている者には救いとなる心理学なのであります。

 トランスパーソナル(心理学)とは、文字のごとく・トランス=越える、パーソナル=個人という意味であり、自分勝手な個人意識の境界を乗り越え、共有できる世界、次元を自覚することにおいてこそ、幸せを感じ、現代の病める人々の癒しにつながる、という教えなのであります。
これらの考え方は、基本的には仏教の思想と異なるものではないと、いえるのではないでしょうか。

 いずれにしましても、このような社会にあって、真剣に世直しに取り組んでいる僧侶、医者、カウンセラーの方々がおられることを知っていただきたく拙い文ではありますが筆をとらせていただいた次第であります。

心光寺 宗川 太洋

 

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